前回の田んぼの話に続いて、今回はお米の話をします。割と基本的な内容ですので、お酒造りに詳しい人には退屈かもしれません。
まず始めに、日本酒や焼酎に使われるお米は、通常私たちが食用に使用しているお米とは、違う種類のものを使うことが殆どです。
一般に食用米というと、『コシヒカリ』や『ひとめぼれ』とか『あきたこまち』等が知られていますが、このようなものを『飯米』(はんまい)と呼びます。
では、我々酒造業界が使用するお米は、『山田錦』や『五百万石』等が有名銘柄であると思いますが、これを『酒造米』とか、『酒造好適米』と呼びます。このような酒造米は、飯米より米粒そのものが大きいものが多いという違いもあります。
そして、この『飯米』と『酒造米』での大きな違いは、でんぷん質の純度的なものです。
酒造米は、飯米に比べ、たんぱく質や脂質の少ない、でんぷん質部分の多いお米であることが多いです。
何故そのような違いがあるかというと、一般的に飯米では、でんぷん質のほかにたんぱく質や脂質を酒造米より多く含んでおり、これが人間の味覚では「うまみ」として感じられます。しかしながら、アルコール発酵過程で酵母菌がアルコールに変えるのは、お米のでんぷん質から出来た糖質で、人間が感じる「うまみ」の部分は不要な要素となるからです。
また、酒造米には、中心部に『心白』(しんぱく)というでんぷん質の多い層が大きく、外観でも飯米と区別が付くほどです。下の画像で、精米したお米でもはっきりと心白が見て取れます。
また、お米の性質以外でも、精米の仕方についても飯米と大きく違います。
通常飯米では、玄米の状態から、総重量の10%程度を削る精米をします。これだと、精米後に重量が90%程度残るので、『精米歩合90%』と呼びます。酒造米の場合では、多くの場合この精米歩合が70%以下になる場合が多く、大吟醸などでは、35%なんていう贅沢な精米を行います。
なぜこれほど削るかというと、先ほどの飯米との成分の違いの事とリンクするのですが、お酒造りには、より純粋なでんぷん質の部分だけを使用する方が良い酒が出来るとされているからです。 なので、弊社で一番上等と言える大吟醸では、35%まで削るため、米粒というより、仁丹のように小さくなっています。70%くらいだと、普通のご飯用より少し小さいくらいの見た目かと思います。
また、削った部分も、決して廃棄とか勿体無いことはせずに、お煎餅などの原料に生まれ変わります。
また、先ほど大体の清酒では、精米歩合70%以下にするといいましたが、中には80%のお酒なんかもありまして、結構美味しかったりもします。そういうのはうちでは造っていませんが、そいいうお蔵さんの技術は凄いと思います^^;